“このまま”がバンドの目指す場所

pick up music#1(以下、記事参照)で紹介した4人組のポストロック・インストバンド「Nur(ヌル)」

社会人として全員フルタイム勤務する極めて多忙な日々の中で、決して簡単ではないバンド活動を続ける理由や今後の展望をインタビューした。

バンド活動は「プロを目指す」か「遊び」か。

世間からそういった見方をされることも珍しくはないバンド活動において、「ライフワーク」としてのバンド活動のあり方をそこに見た。


Q:今日はお時間いただき、ありがとうございます。ぜひ、結成のきっかけや活動期間からお聞かせいただけますか?

バンド活動がしたいと考えて、インターネット上で作曲を担当する主メンバーの2人が出会いました。そこから大学時代に一緒に音楽をやっていたもう2人が加わって、今の4人体制になっています。この体制になって、約1年半くらいです。

その前は別メンバーやサポートメンバーがいた時期もありましたが、いわゆる音楽性の違い等々あり、現在のメンバーに落ち着いてます。今は本当に良い形になっていると思います。


Q:仕事も忙しい中で、なぜ「Nur」というバンド活動をしているのでしょうか?

ライフワークだからです。確かに全員が業種も様々な仕事をしていて、土日休みも共通していない状況だけど、スタジオ入りは曜日を決めて極力定例化して、ライブは計画的に先々の予定を合わせて立てることで、忙しいとはいっても共通で割く時間は十分に作れます。

スタジオ練習の時間帯が遅めになったり、ライブ出演もリハーサル無しでの本番出演を余儀なくされる場合もありますが、全員が納得して調整すれば、活動に支障は特にないと思います。また、全員がこのバンド活動をライフワークと捉えて積極的だからこそ、このバンド活動のために能動的に諸々を調整してくれる。これが一番大事です。


Q:なるほど。全員のライフワークであることで、全員が能動的に調整をして活動を前向きに続けていけると。では、皆が「Nur」をライフワークたらしめているものは何なのでしょうか?

これには大きく3つあります。

1つ目は、素直に楽しいから。友人からの誘いや親の勧めなど、細かな理由や状況は違ったとしても、メンバー全員が過去の何かしらのきっかけで音楽にのめり込み始めて今に至っています。クラシックや吹奏楽の出身者が多く、“弾く”という事に出会えていること。そこからメンバーそれぞれの経緯があり、BUMP OF CHICKENやSTRAIGHTENER、Led Zeppelinなど、多くのロックミュージックと出会って、全員がバンドという形態を望むに至った憧れや経験のバックボーンがあること。4人全員が弾くことが好きで、弾いている音楽が好きだからこそ、ただ楽しいという思いで続けています。

2つ目は、自分たちがNurの曲の一番のファンだから。全員がNurの曲のファンなんです。自画自賛で曲を作るし、そうでありたいと思うし、特定の人だけで曲を完成させるのではなくて、スタジオ入りして骨子をベースに全員で曲を仕上げるという行為が、全員に曲に対する愛着を持たせていると思います。

あとクオリティの求め方も全員が共通してますね。皆が職人気質なんです。弾いてて楽しいから、もっと表現を「こうしたい」「ああしたい」が自分の中で出てくる。あとは合わせでバランスを整えれば、自ずと全員が納得のいく完成度に到達できる。インストゥルメンタルというキャラクター性のない、純粋な音で表現するジャンルだからこそ、という部分も大いにあります。気質に合ってる。そうやって全員で完成させた曲ですから、自分たちが自然にファンになりますよね。

3つ目は、ペースが合っているから。これが一番大事かもしれません。メンバー全員が今までのバンドで一番ストレスがないと言う。例えば経済面では、全員が働いているし、毎月定額で決めてバンド活動資金を集めている。急な出費を要求されることもなく、スタジオ代もライブ出演の費用も、集めた資金の中でできることを無理なくやっていくだけなので、負担がなく安心して取り組める。無理に売れようとしてないし、生活の糧として音楽をやっていない。全員が無理のないペースで、自分たちが楽しくあることを一番大事にしているから、ノンストレスでライフワークにできている。


Q:ありがとうございます。全員が音楽が好き、そして同じ方向に向かって、ストレスのないペースで進めていけている。これがNurの大事なことであり、ライフワークとしての在り方なんですね。最後に、今後「Nur」で実現したいことを教えていただけますでしょうか?

このまま続けたい、それだけです。この先、メンバーにそれぞれのライフイベントが待っているので、一緒にできない期間も出てくると思います。そうだとしても、再開できる状態になれば全員が当然のように戻ってくる、そんな活動であり続けたいと思っています。

自画自賛ですが「Nur」の音楽はすごく良いので、多くの人に広まってくれたらいいなという思いはあります。ですが、広めるために何か追加でパワーをかけるのではなくて、自分たちが好きな音楽を作って弾いて楽しんでいる中で、「Nur」の音楽をたまたま見つけて気に入ってくれる人がいたらそれでいいし、その1つ1つの出会いに感謝して過ごしていきたいと思っています。

音楽好きとしては、ロックフェスという大舞台への憧れは正直あります笑「Nur」への出会い方が音源でももちろん嬉しいですが、パフォーマンスから入る人もいてくれると嬉しいなという思いもあるからです。ただ先ほども言ったように、続けることが一番大事。それ以上でも、それ以下でもなく、4人のライフワークであり続けることが一番良い状態だと考えていますし、こんな幸福度の高いライフワークを続けられる自分たちは、本当に幸せだと感じています。


今後の展望は「このまま続けたいだけ」という答えが印象的だった「Nur」の4人。

バンドは売れるか売れないかか?人気がなければただの遊びか?

そうではない。1つの「生き甲斐」として全うし続ける。

そんな社会人バンドという1つのあり方を示し続ける彼らに、これからも注目し続けたいと思った。

雪降る山岳、領する宗教都市

千変万化の大海原展

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