イラストは自分と社会の橋渡し

illustration#1(以下、記事参照)で紹介した「げなくユウタ」氏のイラストレーション制作について、インタビューを実施した。

イラストレーションは描写やイラストタッチなど、作者のイマジネーションから作り出される構成要素の割合が大きく、同じ事柄と取っても多種多様な作品が存在する。

なぜイラストレーション制作を始めたのか。制作時には何を大切にしているのか。自身に取ってイラストレーションはどのような存在なのか。

それは彼と社会を繋ぎ合わせる唯一無二の手段になろうとしていた。


Q:今日は貴重なお時間をありがとうございます。たびたびSNSでも制作したイラストをアップされていますが、イラストはどういう時に制作していますか?

2つあります。1つ目は、シンプルにイラスト制作の依頼をいただいた時。2つ目は、こっちが原点だったりするんですけど、自分の持ち物をDIYする時ですね。

もともとフィジカルなアイテムが好きなんです。Tシャツとか、リュックとか、スケボーとか、キャンプ用品とか。例えばTシャツとか欲しいなってなった時に、欲しいデザインのイメージがあるんです。最初は世の中のTシャツから探すんですけど、イメージ通りのデザインって見つからないことが多いんですよね。だから自分で描いて、デザインごとTシャツを作ります。今、イラスト制作で使っているデスクも、思い描くサイズ感のデスクが見つからなかったので自分で作りました。


Q:なるほど、ものづくりの1つの要素としてイラストがあるんですね。ちなみに、DIYを始めたきっかけは何でしょうか?

小学生まで遡ります。当時、ゲームとか禁止されてたので、ノートに「自分だったらこういうステージを作る」みたいな創作ステージを考えて、指でなぞって遊んでました。ノート5〜6冊は描いたと思います。あと人気だったデジモンとかも、おもちゃをあまり買ってもらえなかったので、自分でデジモンの絵を描いて、プラ板でキーホルダーを作ったりもしてました。そんな幼少期だったので、ある程度のものは全部自分で作れば楽しめるという感覚が身についたんだと思います。


Q:その頃からずっとDIYを続けてきたんでしょうか?

意外とそうではない時期もありました。中学・高校時代はゲームとか漫画とかが解禁されて、どちらかというとコンテンツを消化する日々を過ごしてました。それと同時に、徐々に社会形成されていく年頃の周りの様子を見ていく中で、みんなが話題にしているコンテンツや、面白いと言って話している内容を聞いていくと、どのようなコンテンツが世の中に求められるのか、少しずつわかってきた時期でもあります。


Q:では、本格的にイラストレーション制作を始めたのはなぜでしょうか?

大学生の頃になります。もともと超マイペース人間で、人の名前と顔をセットで覚えるのが本当に苦手でした。同じクラスの人たちを覚えるために、座席表に似顔絵を描いてました。すると「絵が描けるんだ」って周りがなって、「自分の似顔絵描いてよ」という人が増え、小さな依頼受けが始まったんです。絵を描いて喜んでもらえることが嬉しいという感覚が芽生え始めた頃です。

大学では絵が描ける人みたいなポジションも少しずつ確立されてきたので、喜んでもらう幅を広げたいなという気持ちもあり、本格的にイラストレーションを勉強して描いてみようと思ったんです。もちろん自分のためのDIYにも活きると思いましたので、ツールも導入して、イラスト制作を少しずつ始めていきました。


Q:自分の得意が功を奏し、より人に喜んでもらうアウトプットがしたいという気持ちが、イラスト制作の原点だったんですね。ありがとうございます。作風として、デフォルメテイストのイラストが特徴的ですが、好きな表現方法なのでしょうか?

描く人のエッセンスで180度変わるので、デフォルメ表現は好きですね。クロッキーを練習してた時もありました。だけど忠実に物を描いた作品を見て、これってオリジナリティはどこにあるんだろう?部屋に飾りたいかな?という疑問が自分の中で浮かびました。

デフォルメ表現は、見せたいものを過剰表現して、見せなくてもいいものを削る。大枠としては同じ内容の2つの依頼があったとしても、それぞれ違う依頼主の思いやこだわりをデフォルメ表現で現すことで、伝えたい部分が前に出て、全く別物のイラストレーションになる。だから好きですね。映画でも音楽でも何でも、作者が「ここを見て欲しい!」と表現されているものは総じて好きです。


Q:見てほしいこと、感じてほしいことを強調でき、それが十人十色の作品になる。個の時代に会う表現方法ですね。現在も制作依頼を受けていると思いますが、やはりそういった思いで応えているのでしょうか?

先ほどのデフォルメ表現の部分は、依頼主が何に使いたいイラストなのか、何を伝えたいのか、そういったものを表現するのはもちろんです。ただ、特に大切だと思っているのは、人の依頼で制作したものでも、自分が気に入る作品に仕上げることです。

もともと小学生の頃は自分のためだけに、絵も含めてDIYをしていたわけです。つまり自己満足精神が満載なのです。依頼主の依頼内容にただ忠実に応えるだけだと、自分にストレスも溜まります。なので、自分もしっかり満足して、そして依頼いただいた方にも喜んでもらえる作品を作ることをより意識しています。

依頼主からコンセプトをいただいた後、作品に自分が入れたいテイストやエッセンスを足し混んでみて、自分も楽しみながら提案する形で制作を進めていきます。ただ言われたものを依頼主のイメージに合うように作るよりも、アイディアを凝らして両者に取って新しい形を見つける方が、お互いに取って良いことなんじゃないかなと思います。

いただく依頼内容によっては、今の自分の技術では表現し切れないと思うものもあります。その度に表現方法を勉強して手探りでやってはいますが、そうやって自分に足りない技術が見えてくるので、レベルアップの機会にも繋がっていて感謝です。


Q:依頼であっても、自分が好きになれる作品に仕上げるため、こちらからエッセンスも提案していく。依頼主も新しい気づきがあり、良い関係構築ができそうですね。いつ、どこで制作していますか?

基本は家で制作します。たくさんの参考資料を広げて制作するので、DIYで制作した専用デスクが活躍します。ただ、割と集中力が長く続かないタイプなので、スーパー銭湯とか、カフェとか、場所を変えて描いたりもします。なので、フットワーク重視でiPad ProとProcreateでほとんどツールは完結させています。

時間帯としては寝る前ですね。例えば昼ご飯の準備とか、その日の他タスクが残っていると集中できないので、あとは寝るだけ状態が一番捗りますね。


Q:ありがとうございます。ぜひ最後に、今後のイラストレーション制作の展望を教えていただけますか?

イラストレーション単品で提供するというよりは、やっぱりフィジカル物の制作が好きなので、身の回りのものや普段使うものなど、人々の生活に溶け込めるようなものを制作して提供していけたらと考えています。

自分は異常なほどマイペースな人間なので、社会の集団の中で過ごしているとストレスも大きいんです。なので、自分と社会は適度な距離感を保って、その間を繋ぐものがイラストレーションでありたいと考えてます。具体的な方法はこれからなんですけどね笑

人のために制作をして喜んでもらって、制作した作品が自分の生活に必要なお金を稼いで来てくれる。この構図がやはり自分の人生に取っての理想なんだと思っています。


幼少期に育まれたDIY精神から生み出されるイラストレーション。

社会と適度な距離感を保って、その繋ぎ役を担うイラストレーションでありたいという思いから、今後どのような形で制作をして、人々に価値を届けていくのか。

勝手ながらにしっかりと見届けさせてもらいたいと思う今日この頃だ。

illustration:げなくユウタ

クラシック色の海岸線

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