まずはこの一曲を聴いてほしい。
ギターリフの多重な重なりが美しいインストゥルメンタル。
後ほど、麗しく優雅なカルテットアレンジに変貌することになる。
夕日が映える海岸沿いを走る、どこか物悲しいメロディライン。
枯れた音色のギターから始まり、テンポよく走りつつもどこか上がりきらない切なさを感じる。
この曲のギターのコード進行は終始一貫して同じ。
E♭→F→B♭と明るい進行が続く。では、なぜ物悲しく感じるのか。
ギターのコードだけで見ると明るい進行だが、イントロ以降から入るベースのルート3音目が加わることで、曲全体のコード進行はE♭→F→Gmと儚げに終わる和音に変化する。
これにより、ギターだけで始まるイントロは綺麗な夕日の立ち上がりを想像できるが、それ以降は少し寂しげに夕日の見える海岸線を走る様子が想像できる。
では、同曲のカルテットアレンジを聴いてほしい。
ぜひとも、耳心地の最高なこの一品をご堪能いただきたい。
雰囲気も曲構成もがらりと変わり、原曲の面影を残しつつも、妖艶で贅沢な楽曲になる。
冒頭は原曲と同じフレーズで始まったと思った瞬間、無音の一間を挟んだ途端のワルツ進行。
海岸線の疾走を思わせた原曲とは違い、迷いながらも一歩一歩足を進めてきたこれまでの人生を振り返るかのよう。
ワルツが終わると、ここからは未来に踏み出す。
気持ちを新たにしつつも、静かに自分と向き合い覚悟を確かめる。
そして原曲の間奏後半で流れたギターと同じフレーズをなぞるバイオリンから、未来に向かって走り始める。
ジャンルの垣根を超えた1つのコラボレーション。
楽器やアレンジの違いで、同じ曲がこうも姿を変える。
カルテットを愛する人がバンドを知り、ロックを愛する人がクラシックを知る。
そんな新しい音楽との出会いのきっかけになると良いなと思う。
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