音楽が自分たちの日常を満たしてくれている。
そう語るは、pick up music#3(以下、記事参照)で紹介した、京都を中心に活動する4人組インストゥルメンタル・バンド「sense of life」。
憧れて、迷って、悩んで、笑って、のめり込む。
環境の変化とともに変わっていく、愛する音楽との関わり方。
紆余曲折してでも、続けてきたからこそ辿り着いたsense of lifeに見る、彼らなりの本気の姿勢とその原動力である深いメンバー愛。
限られた時間でのインタビューと、限られた文字数での表現となるが、この記事で少しでもお伝えできたらと思う。

Q:今日はお忙しい中で時間を作っていただき、ありがとうございます。早速ですが、sense of life結成からの軌跡を教えていただけますか?
結成したのは2015年。意外と新しいんです。高校や大学時代にはロックやクラシック、ジャズやビッグバンドなど、大好きな音楽に全力を注いできたメンバーですが、社会人になってからインターネットを通じて知り合い、sense of lifeを結成しました。数回のメンバーチェンジを経て、2017年から今のメンバーに落ち着いています。

Q:社会人になってからの繋がりだったんですね。意外でした。忙しい社会人でバンドを組むのは大変だと思いますが、なぜやろうと思ってんでしょうか?
音楽のない生活の穴を埋めるためでした。
高校や大学でバンド活動に打ち込んで、いざ卒業するとなった時、当時は仕事とバンド活動を両立する柔軟性もあまり考えられませんでした。社会人でやるバンドは遊び、本気でやるならバンド一本でフリーター生活みたいな雰囲気があった。「本気でバンドをやっている人たちとは差があるから、社会人でバンドなんて辞めてしまえ」とさえ言われ、泣いたこともありました。
そんなこんなで就職して、社会人として働き始めました。大学から惰性で続けていたバンドもありましたが、会社での拘束時間も学生とは比べ物にならないので、”惰性”では続かずに解散したんです。でも全然悔しくなくて。こんなに音楽好きなのに、なんで悔しくないんだろって。
ただ、周りにバンドを続けている友人は少なからずいました。みんな楽しそうにライブハウスの話とかしてて、そんな中で全然同じ目線で話せていない自分が悔しかったし、みんなが羨ましかった。社会人として働き始めたのに、生活にぽっかり穴が空いていて、仕事して帰って寝るみたいな生活を惰性で送っていて、このまま過ごしていくのは嫌だと思った。
そこから動き始めたんです。バンドやろうって。1人では曲は作れないし、みんなで音楽を作る楽しさ、そのバンドの醍醐味を満喫したいって。
Q:好きな音楽を一度失ったけど、生活にどうしても必要なものだったからこそ、ぽっかり空いた穴を埋めるために動き出したんですね。そこから、どのようにsense of lifeのメンバーが集結したんでしょうか?
基本的にインターネット上で募集をかけて集まりました。最初はギターがサンプルフレーズをアップロードして募集をかけ、ベースがそれを見つけた。これが奇跡だったんです。実はこの2人は高校の同級生。当時一緒のバンドを組んで打ち込んでいた。だから見つけた時はすごく嬉しかった。学生時代に一緒に音楽にのめり込んでいた友人が、社会人になった今も同じ気持ちで音楽をやろうとしていた。そんな姿にすごく感動したのを覚えています。

そこからドラムとキーボードも集まって、sense of lifeが小さく始まりました。たった2曲の1st demoから始まったsensen of lifeが、今や自分たちの生活を彩るものになりました。
Q:冒頭でメンバーチェンジもあったと伺いましたが、少し伺ってもよろしいでしょうか?
実はピアノに関しては、2回のメンバーチェンジがありました。2017年から今の4人に落ち着いています。sense of lifeの楽曲を作る上で、ピアノに強いこだわりというか、やっぱりピアノを入れたいという思いがあったんです。何度かピアノに参加してもらったのですが、なかなか定着せず3人での活動期間があり、活動が途切れないようにスタジオには行くけども、特別何もせず過ごしていました。
そして2017年に今のピアノメンバーが参加。若干、惰性になりかけていたsense of lifeを吹き返してくれました。彼女の実力は確かですし、メロディのアイディアも新しい観点をたくさん持ってきてくれる。バンドとして本当に良いターニングポイントでした。
彼女はクラシックやジャズ、ビッグバンドに打ち込み、かつファンクバンドに所属してプロのミュージシャンとして自立することを目指していた経験もあります。そんな彼女がビジネスライクの音楽ではなく、本当に一緒にやりたい人たちと生み出す音楽に没頭したいという思いで参加してくれて、今のsense of lifeがあるんです。
Q:sense of lifeにとっての転機になっていたんですね。今の4人になったからこその観点はありますか?
sense of lifeの今の4人は、それぞれがフレーズのアイディアを作って持ち寄るような0→1を生み出せる人が集まっています。そして何より、お互いを否定しない。それぞれが信じ合っているし、この4人ならどんなものでも面白い音楽になると思っているから、1人1人のアイディアに乗っかって、展開して、想像もしてなかった音楽が生まれてくる。これがまさにバンドの醍醐味であり、だからこそ続いているし、続けていきたいという気持ちで溢れています。

今はメンバーの半分が家族を持ち、子育ても両立させながらの活動になっています。今までよりも更に一緒にできる時間が貴重になりました。家での練習時間こそ減りましたが、スタジオに入る時は今まで以上に集中するし、楽しみが強くなりました。全員揃うことができなくても、入れるメンバーでスタジオに入ってフレーズを作り、メンバーに送ってはチャット上でアイディアを膨らませて、楽曲として仕上げていく動きも増えました。そうまでしても楽しく続けていられるのは、音楽が好きという根本の思いと、今のメンバーを愛して尊敬し、そのメンバーと生み出す音楽を自分たち自身が待ち望んでいるからだと思っています。
Q:愛するメンバーと生み出す音楽を、自分たち自身が待ち望んでいる。これほど素敵なバンドはそうそうないと思います。ありがとうございます。ぜひ最後に、今後のsense of lifeの向かう先を教えていただけますか?
sense of lifeは、いわゆる”社会人バンド”として活動しているわけですが、仕事とは違うけども、遊びでもないんです。真剣にやってる。バンド一本でやってる人たちに引けをとっているつもりもないし、時間が限られている分、密度濃く一生懸命に打ち込んで楽しんでいる。なので、今後もこのメンバーで良い音楽を作り続けながら、ライブハウス内外でも積極的に演奏して、その真剣さを認めてもらえるように結果を出していきたいと思ってます。
あとフェスに出たいですね。やっぱりバンドマンとしては誰しも憧れる舞台であり、一番わかりやすく結果を示せる場所だと思っています。オーディションで悔しい思いをしたこともありますが、このメンバーとなら多少無理してでも挑戦したいという気持ちがありますので、今後も挑戦してみたいと考えています。
ただ、そう思えるメンバーと活動できているだけで、十分に幸せなことなんですけどね。

ぽっかり空いた生活の穴を埋めるのは、心から愛する音楽。
そこにジャンルとか、プロとかアマとか、会社員とか音楽一本とか、そんなのは関係ない。
どういう形であれ、音楽にのめり込む日々と、その日々を一緒に作ってくれるメンバーが、人生の貴重な財産であるということ。
それが紆余曲折を経て辿り着いた4人から教わった事だった。
そんな4人から生まれるこれからの音楽とパフォーマンスを、1人のファンとして追い続けたいと強く思った。

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