僕が見つけてしまった理想郷

世界中の音楽を集めたい。

そして集めた素晴らしい音楽を伝えたい。

DJ world#1(以下、記事参照)で紹介した社会人DJ「Ryota Asami」氏がそう語る。

なぜ音楽を集めたいのか。

どうしてそれを世の中に広めたいのか。

会社員という多忙な立場にも関わらず、DJという形で多方面のイベントに積極参加するその原動力は何なのか。

何にも染まらない彼自身の純粋な心がそうさせていた。


Q:今日はお時間いただき、本当にありがとうございます。お忙しい中でも精力的にDJ活動されている印象ですが、どのような活動概要か教えていただけますか?

現在は「Action And Action」「Great Approach」「ノイバウテン」という3つのコミュニティに所属をしており、イベント開催のたびにお誘いをいただき、音楽バーなどでDJをさせていただいてます。その他にも、未所属イベントから度々お誘いを受けたり、バンド主催のライブイベントで転換DJとして参加させていただくなどもあり、合計するとおよそ月1本、年間10本強のペースで出演させていただいてますね。DJには好きなジャンルやアーティストなど、様々な切り口で作られたコミュニティがあり、そこに所属することでイベント開催の時にオファーをいただく形が多いです。


Q:DJイベントとは、どのような場所なのでしょうか?

音楽好きが集まる憩いの場ですね。そこに詳しさとかは関係ありません。

DJのコミュニティごとにバーやライブハウスなど拠点としている場所があり、そこでDJイベントが定期開催されています。基本的にはバーに飲みに行く感覚と同じです。音楽が好きな人たちが集まって、お酒を片手に語らいます。会場ではDJが持ち回りで音楽を流すので、共通の推し曲に盛り上がったりと、少しライブ感があったりもします。DJも予めトラックリストを仕込んで来る人もいれば、当日の会場の雰囲気に合わせて選曲する人もいたりと様々です。

DJや参加者がハッキリと分かれているわけではなく、さっきまで飲みながら流れる音楽を楽しんでいた人が、DJとして流す側に回って会場を楽しませるなど、分け隔てなく音楽好きが集まるとてもアットホームな空間がDJイベントの魅力ですね。


Q:少々敷居の高いものかと思っていましたが、とてもフランクで楽しい場所だと伝わってきました。ご自身は3つのコミュニティに所属されていますが、お好きなジャンルなど、普段の聴き方にこだわりがあるのでしょうか?

確かにそれぞれインディーエモやインダストリアル、ダークウェーブなど、多少なりとも方向性のあるコミュニティに所属してはいますが、私自身の好みに偏りはなく、どのようなジャンルでも先入観なく聴きます。ただ、フィジカル作品が好きという点においては、こだわりがあると言えますかね。

もともとデュエリストで遊戯王カードを集めに集めていた学生時代だったりと、根っからのコレクター気質なんです。なので、レコードやCD、カセットやブックレットなど、音楽作品の物理的な側面に注目して集めることに充足感を感じます。レコードは最近集め始めたのでまだ100枚程度ですが、CDはもう数えきれないほどあります。これでもまだまだ。もっと世界中の音楽を集めて、囲まれて過ごしたいと思っています笑

あと一番大事にしているのは、フィジカル作品の細部に宿る音楽の世界観や、アーティストのバックグラウンドなど、そこに込められたストーリーに浸って音楽を旅することです。1つの自分の音楽の楽しみ方として、CDパッケージの材質やブックレット、歌詞カードなどを手に取って眺めながら、アーティストの半生を思い描いたり、音楽以外の部分から世界観を補填して、世界観に極限まで入り込みたいという思いが強いんです。だから好きな作品は全部集めて手元に置いておきたいんです。


Q:昔からずっと音楽を集めることに夢中にだったのでしょうか?

いえ、幼少期から何か音楽にどっぷりハマっていたわけではありません。小学生のころは、せいぜい親が車で流していた音楽を聴いていたくらいです。中学や高校ではアニメにハマっていて、玉置成実や水樹奈々などを中心にアニソンをひたすら聴いてましたね。高校時代はロキノン系などもろくに知らなかったです。

ただ、音楽をインプットし始めたきっかけがいくつかありました。1つは音楽の授業。毎回1人がクラスメイトへ1曲紹介するという当番がありました。16人いたので、16通りのインプットがありましたね。また、高校時代はアニメが好きなこともあり、実は創作漫画を描いてました。自分の作った漫画に対して、OPやEDを選曲するなら何を起用したいか、妄想して遊んでたんです。16人からのインプットもありましたし、自分で少しずつ音楽を調べ出した時期でもありましたね。


Q:創作漫画に起用する楽曲を考えて妄想するなんて、すごく楽しそう。そういったきっかけで少しずつ音楽を探すようになったんですね。DJとなった今では知った音楽を伝えたいという思いもあると思いますが、そちらも何かきっかけがあったのでしょうか?

きっかけは1つのバンドとの出会いでした。

高校3年生から大学にかけては自分自身もバンドをやっていました。この時期はロックミュージックに魅せられていたので、FACTやFear, and Loathing in Las Vegasなど、激しい音楽を良く聴いていました。大学2年の頃はthe HIATUSに魅了されて、少しダウナーな音楽と言いますか、暗めの音楽も聴き始めたりしました。そんなこんなでロックミュージックを聴いて、バンドサークルで過ごす日々なわけですが、ライブがとても苦手だったんです。バンドの人間関係も難しい局面もあったし、そもそも音楽は聴くほうが好きだなと思い始めた頃です。

そんな時、当時広がり始めていたTwitterからマイナーなバンドの情報も入ってくるようになり、Lonny’s Storagiaというバンドと出会いました。この出会いがきっかけで今のDJ活動に繋がっていると思います。

Lonny’s Storagiaはまだまだ知名度のあるバンドではなく、自身のバンドサークルのメンバーさえ誰も知らないようなバンドでした。ただ、ライブを聴きに行ってすごく良かったので、周りの友人にオススメしたり、ライブで積極的に写真を撮っては本人に渡したりしていました。すると宣伝やHPに自分が撮った写真を使ってくれたり、バンドの飲み会にメンバーでもないのに呼んでもらったりして嬉しかった。その時、Lonny’s Storagiaという素晴らしいバンドをたくさんの人に知ってもらうことや、そのバンドの最高のファンである自分にすごく喜びを感じていることに気づいたんです。


Q:なるほど。プレイヤーすら経験した自分が、とある1組のバンドとの出会いがきっかけで、ファンとして貢献する形に大きな喜びを感じることに気づいた。すごく興味深いお話をありがとうございます。そういった源泉が今のDJイベントへの積極参加の原動力になっているのですね。

その通りです。自分のような人種にとっては、DJイベントって究極の到達点なんですよね。好きな音楽を語り合ったり、紹介し合ったりする場所の存在を知って衝撃的でした。初めて参加する時は勇気がいりましたが、よく来たね感というか、歓迎ムードがすごくって驚きました。好きなものをアウトプットして喜ぶ理想郷を見つけてしまったと思った。

そんなこんなでDJとして立ってみないかと誘われて、今となってはDJイベントでまがいなりにも音楽を届ける立場もやらせていただいています。自分のコレクションしている音楽を知ってもらって喜んでもらえる機会をいただけ、更には他の方から音楽を教えてもらい、コレクター魂が黙ってはおらずに集めて満足。今はこんな幸せのループの中にいるわけです。

これからも世界中の音楽を集めて、そして届けて、そして集める。そんなループの中で過ごしていきたいと思っています。


根っからのコレクター魂。

そして1つのバンドとの出会いをきっかけに知った、届ける喜び。

その欲を満たす理想郷を見つけた彼は、今日も人々に素敵な音楽を届けている。

そしてひっそりと、自分のコレクションも増やし続けている。

Ryota Asami

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